作る人を支える側から、“作る人”へ。― 現場監督が木工職人になった理由 ―

はじめに|なぜ、この話を伝えたいのか
家具を選ぶとき、デザインやサイズ、色合いなど、見た目の印象ももちろん大切ですが、
私はもうひとつ、「誰がどんな想いで作ったのか」も、暮らしに寄り添う家具を選ぶうえで大事なことだと思っています。
このページでは、Twigs&Dwarf(ツイッグスアンドドワーフ)という小さな木工家具ショップを始めるまでの、私自身の歩みを少しだけお話しさせてください。
なぜ、建築現場の監督という安定した道から離れ、木工職人という選択をしたのか。
それは、ただ作ることが好きだったというだけではなく、「手の届く距離で誰かの暮らしを支えたい」という気持ちに気づいたからでした。
順風満帆だった現場監督時代

私はもともと、建築系の大学を卒業後、首都圏の大手住宅メーカーに就職しました。
配属は現場監督。設計や営業に進む前に「まずは現場を知りたい」と考えての選択でした。
1年目で二級建築士に合格し、新人賞・優秀社員賞を受賞。最短で昇進もしました。
年収は20代前半で500万円以上。いわゆる“順風満帆”なキャリアだったと思います。
(ここらへんは少し生々しい話かもしれませんが、包み隠さずお伝えしています)
けれど私が一番面白いと感じていたのは、書類の管理や、社内で実績を残すなどではなく、
現場で職人さんと交わす「どうやってこの納まりを作るか?」という会話でした。
現場で芽生えた「モノづくりをしたい」という想い

職人の手仕事を間近で見ているうちに、私はだんだんと“作る側”になりたいと思うようになりました。
とくに大工さんの仕事ぶりを見て、「自分でも作ってみたい」「自分の手で何か形にしたい」と感じるようになり、家でDIYを始めたのがひとつのきっかけです。
モノづくりは、見ているだけでは満足できない。
支える側ではなく、「自分の手で作る人」になりたいという想いがどんどん強くなっていきました。
なぜ木工職人?なぜ大工ではなかったのか

「じゃあ大工になれば?」とよく言われます。
仕事をしている中で身近にいて仲良くしてもらった方の多くも大工さんでした。
でも私が選んだのは、大工ではなく木工職人でした。
その理由は、木工ならひとつの作品を最初から最後まで自分の手で完結できるから。
さらに、自分の名前で、自分の想いを込めて、直接“誰かの暮らしに届けられる”のが魅力でした。
それに私は、人と関わり続けるより、静かにものづくりに没頭する時間の方が好き。
時間を忘れて木と向き合う。それが何より心地よかったのです。
木工のまち・鹿沼へ移住。現実は甘くなかった

木工のまち・鹿沼へ移住。現実は甘くなかった
想いを胸に、埼玉から木工のまちと言われている、栃木県鹿沼市の木工所へ移住・転職しました。
何度も退職を引き止められましたが、「挑戦しなければ一生後悔する」という気持ちが勝ったのです。
けれど、現実は思っていた以上に厳しいものでした。
給料は手取りで約19万円、ボーナスなし。
それ以上に困ったのは、会社としてのビジョンや目標が見えなかったことです。
社長から将来像が語られることもなく、社員にも何の方向性も示されない。
社員たちはみな、「どこに向かって働いているのか」がわからないまま、日々の作業をこなしているように見えました。
当然、このような規模も利益も少ない会社ではまともな昇給もなければ賞与もない。
それでは、やる気を持ち続けるのは難しいのも当然です。
目指すべき場所がない組織では、人は前に進めません。
そんな中でも、私は違いました。
「木工をやりたい」「技術を身につけたい」という明確な目的があったからこそ、
愚痴ひとつをこぼすよりも、自分の手を動かすことに集中できたんです。
規律のゆるさを逆手に取り、空いた時間で木工の練習に没頭することができました。
道具を使う感覚、木材の性質、手の力加減――少しずつ身についていく感覚が、嬉しかった。
でも同時に、「このままここに留まっていてはいけない」という危機感も強くなっていきました。
その結果、ブログを書いてみたり、YouTubeで動画を公開してみたり、DIYアドバイザーとしてライター業をしたり、やがてはTwigs&Dwarfという自分自身のブランドを立ち上げるに至ったのです。
▶︎ ブログ
▶︎ YouTube
▶︎ DIYのウェブライターとして活動している“となりのカインズさん”
それでも続けた“作りたい”という想い

「木工職人になる」と決めて鹿沼に移住しましたが、
ただ技術を磨くだけの毎日で終わりたくないと思っていました。
家具は“暮らしの中で使われてこそ価値がある”。
だからこそ私は、「使いやすさ」や「暮らしとの調和」をもっと深く理解したいと思い、
整理収納アドバイザー準一級の資格を取得しました。
また、技術を身につけるだけでなく、
「それをどう伝えていくか」にも強い関心がありました。
記事の執筆や動画制作を通して、
“作る”ことと“伝える”ことの両方に挑戦してきました。
というのも、職人というのは「自分が良いと思った物を作れば、それだけで伝わる」と思いがちです。
けれど、実際にはどれだけいいものを作っても、その価値を正しく伝えなければ、誰にも伝わらないし届かないことを痛感しました。
私は、ただ木を削るだけの職人ではなく、
設計・現場・整理収納・発信まで、暮らしの全体像を見ながらモノを届ける人になりたい。
そう思って、動いてきたのだと思います。
Twigs&Dwarfという答え

Twigs&Dwarfは、「こういう家具屋があったらいいな」をかたちにしたブランドです。
木工職人の技術は、本来とても温かくて繊細なものなのに、
私たちの暮らしの中ではあまり触れる機会がありません。
だからこそ、「職人の手仕事をもっと身近に感じてほしい」という想いを大切にしています。
カラーは部屋になじむ落ち着いた色味、デザインは無駄をそぎ落としたシンプルさ。
また、サイズオーダーやカラー変更にも柔軟に対応しています。
目指しているのは、10年、20年と家族とともに育っていける家具です。
おわりに|モノづくりの先にある「想い」を届けたい

私は、大量生産の工場ではなく、一人の職人として、ひとつひとつの家具に向き合っています。
それは決して効率的なやり方ではありません。
けれど、「この家具があるだけで、なんかほっとする」と感じていただけることが、何よりの喜びです。
Twigs&Dwarfの家具が、あなたの暮らしにそっと寄り添い、家族とともに時を重ねる存在になれたら。
そんな思いを込めて、これからも家具をつくり続けていきます。
ナチュラルな赤松集成材で仕立てた、サイズオーダー可能な収納棚を多数ご紹介しています。
ぴったりサイズの家具を探している方は、ぜひショップもご覧ください。
▶Twigs&Dwarfオンラインショップを見る
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🪵「オーダーってちょっと不安…」という方は、まずは下の記事で詳しくご紹介していますので、よければこちらもご覧ください。